2026/08/07 16:36
何をやっても、うまくできない子どもだった。自分を表現するのが、苦手だった。
小学3年生で野球に出会う。
頑張れば、上達する。それだけのことが、うれしかった。
けれど中学、高校と勝てないまま終わる。結果を出せず、自信をなくしていった。
高校を出てバス会社の事務員になり、少しずつ褒められることが増えていく。
その勢いで、苦手だったキックボクシングに挑戦し、気づけばプロ選手になっていた。
それでも、外の世界が見たくて、23歳で会社を辞める。
そこから10個ほどの仕事を転々とする。
プロキックボクサーを続けながら、ビジネスでも結果を出したい気持ちだけが、ずっとあった。
26歳で東京へ。サラリーマンは2ヶ月半でクビになり、ウーバーで配達をしたり、迷走が続く。
その頃、趣味で作った靴が200足完売し、次に作った牛革バッグの工場を見学した先で、豚革に出会った。
「これは何の革ですか」
「豚革だよ」
驚いた。皮があることすら、知らなかった。最初は、それだけだった。
けれど調べるほどに、ある事実に行き当たる。
国内流通量は、豚革が第2位。
それだけ使われているのに、その存在は、ほとんど知られていない。
誰も、広めようとしていない。
「誰もやらないなら、俺がやる」
昔から、そう決めてきた。
能力のない自分が生きる、唯一の道だと思っていたから。
そこから10ヶ月、どうすれば魅力が伝わるかを考え続けた。
トンカツ屋にメニュー表やコースターを置いてもらうなど、変化球ばかり試していた。
ライバルの多い直球勝負が、怖かった。
けれどある日、覚悟を決めた。逃げずに、まっすぐ向き合おう。
そうしてSaiが生まれた。